老後のお金勘定に不可欠なのは「年金」です。少なかろうが、払ったものはしっかり回収したいと思うのが人間。原則65歳からの支給となりますが、希望により60~75歳まで選択できるようです
で、悩ましいのが「いつから年金をもらい始めるか」となります。選択肢が広がると悩むのもこれまた小市民の悲しいところ。今回の話題は「年金を繰上げ受給すると障害年金が申請できなくなる!」というインパクトある内容です
●障害年金とは
年金加入者が20~65歳の間に障害の認定を受けると受給できる年金です。生涯にわたり受給でき、しかも非課税です。健康はお金で買えませんが、ありがたい制度であると思います
●障害年金を申請できなくなる!
そんなありがたい制度が利用できなくなることがあります。それが「年金を繰上げ受給する」と申請できないことになります。理屈は「年金を受給開始した時点で65歳になったものとみなす」とのことで、制度上65歳になったのだから障害年金の申請も出来なくなる、とのことです
年金の繰上げ受給に否定的な情報は、だいたい上記の説明がされています。これは全くその通りで、繰上げ受給を検討している人は必ず承知しておかなければならないルールです
●言葉だけで不安を煽り、数値を示さない
言葉だけで「申請できなくなる!」「デメリット」「後悔した例」などと言われて煽られると不安が増大しがちです。落ち着いて考えてみてください。「そのリスク(不利の可能性)ってどのくらいなの?」
調べた範囲の限りではこのリスクについて数値で言及しているものは見当たりませんでした。いまはネットで公的資料が簡単に入手できる時代です。そしてAIに尋ねれば資料のありかを教えてくれます。では早速リスクを追求しましょう
●60~64歳で障害基礎年金を申請する割合は約1%
障害年金は基礎と厚生の二種類ありますが、同時申請が可能なのでここでは全国民が対象である障害基礎年金を扱います
リスクは次の考え方で求められます(対象者はすべて60~64歳です)
対象者のうち、障害基礎年金を新規に申請された件数の割合
・対象者の人数は約747万人
「人口推計」(総務省統計局)(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202309.pdf)より引用
・障害基礎年金を新規に申請された件数は約8万件
日本年金機構 障害年金業務統計(令和4年度決定分)
https://www.nenkin.go.jp/info/tokei/shuyotokei.files/r04.pdf
よってリスクは8÷747で約1%となります
実は新規申請の8万件は年齢別の情報がないので20~64歳の人が申請した件数となります。60歳以上の人に絞ればもっと少ない件数となり、数値はもっと下がります
また、日本年金機構の資料で障害の区分を見ると
・精神、知的障害 79.8%
・身体障害 20.2%
となっています。8割ほどの人が精神、知的障害であり、それ以外の事故や病気に限ると約2割となります
最初の計算でリスクが約1%と計算されましたが、ケガや病気の障害に限定すると約0.2%となります。また、先述したように申請者の年齢を60歳以上に絞ればもっと減ります。
●リスクを数値で把握し判断する
情報A「年金を繰上げ受給すると障害年金が申請できなくなる!年約99万円(非課税)が生涯にわたって受け取れなくなる!」
情報B「年金繰上げ期間に障害認定を受ける確率は約1% ケガや病気に限れば約0.2%」
あなたは上記二つの情報に触れたとき何を感じますか。どちらの情報もウソは言っていません。しかし単に言葉だけで煽るAと、数値で示すBでは受け取る感じが全く違ってくると思います。
リスクを受け入れるか否か、は数値が分からないと判断つきかねます。言葉だけで不安を煽る情報を鵜吞みにせず「そのリスクは何%なのか」を把握し、判断する習慣を身につけたいものです