臨時ニュース!大本営厚生労働省年金部発表「年金受給開始を遅らせると最大84%増額となりお得です」
こんな臨時放送が流れてきたら皆さんどうしますか?
「欲しがりません、75までは」国家総動員で高齢化社会を迎え撃つ勢いですね
今まで「年金繰下げ75歳からなら84%増額」というフレーズに違和感を感じていたのですが、ついにその正体が判明しました。「ナニワ金融道」がヒントになりました
※当サイトでは「〇歳から受給する年金」を「〇式年金」と簡略化して表現しております
年金が低金利商品であることの説明の前に、我々が如何に数字にごまかされているかの例を紹介します
●金利は「月2分」
平成の名著「ナニワ金融道」(青木雄二 著/講談社)に、金利の錯覚を利用したテクニックが描かれています
「金利は月2分です。たとえば300万円借りたとすると、36万円ずつ10回払っていただきます」
月2分とは月2%です。300万円借りて360万円返すのを計算すると
金利 = 60 ÷ 300 ÷ 10
= 2%
となり、案内のとおりです
※計算式の詳細は後述
●返済中に元本は減っている
しかし、よくよく考えるとおかしなことに気づきます
1回目の返済は確かに2%の金利です。支払った36万円の内訳は
・30万円:元本返済
・ 6万円:金利
元本30万円を返済したので、残る元本は270万円です
2回目の返済内訳は残る元本270万円に対する金利6万円となります
金利 = 6 ÷ 270
= 2.2%
金利が上がっていますね
最後10回目の返済内訳は最後の元本30万円で金利6万円です
金利 = 6 ÷ 30
= 20%
なんと、最後の返済は金利20%となっています
これを平均すると月3.5%となり、年利に換算すると42%となります
マチ金の年利42%!さすが帝国金融、関わりたくないですね
(当時の法定金利の上限は54.75%)
ナニワ金融道の帝国金融のように「いかに金利が低くて借りやすい印象を与えるか」がマチ金の常とう手段です
では、お金を与えるほうはどのような印象を与えたいでしょうか。そうです「いかに金利が高くてお得です」という印象を与えたいのではないでしょうか。現に銀行預金などは「うちは年利〇%」を広告しています
もうひとつのお金を与える側「年金」はどうでしょうか。こうすればいかにお得なのかをPRしていますよね
●年金を繰り下げると最大84%増額!
年金に関心がある方はすでにご存じとは思いますが、年金の受け取りを遅らせると増額されます
1か月 0.7%
1 年 8.4%
10年 84.0%
●繰下げ年金は年利0.8%の低金利商品
上記で「1年8.4%」と書きました。これはバブル時代の年利6%超をも凌ぐものすごい年利です。今のようなゼロ金利時代になぜ高金利が実現できるのでしょうか
国民年金満額を65歳、75歳で受給開始すると年額は次のとおりです
65歳: 80.0万円
75歳:147.2万円(84%増額)
これを金融商品として年利を計算すると実は
年利:約0.83%
という、ビックリするくらいの低金利商品だったのです
そのカラクリを以下で説明します
●年利の求め方
全国銀行協会によると、年利の求め方は以下の式となります
年利 = 利息 ÷ 元本 ÷ 期間(年)
この式はよく使いますので頭の片隅に入れておいてください
●繰下げ年金の年利を求める
・利息は67.2万円
本来は80万円のところ、10年繰下げしたので147万円となりました。この差額(147.2-80)が利息となります
・元本は80万円
本来の年額80万円が元本となります
・期間は1年
上記は75歳の1年間で受給する金額なので1年となります
以上を式にあてはめると
年利 = 67.2 ÷ 80 ÷ 1
= 84%
これは厚生労働省が発表しているとおりです
●繰下げ受給増額の落とし穴
実は年金の年利には落とし穴があります
・受給を開始すると年利0%となり元本は一切増えない
つまり「1年繰り下げると8.4%アップ」は受給待機中だけで、受給開始するとアップは一切しなくなり年利0%となってしまうのです
●90歳での受取総額を確認
90歳時点での年金受取総額を確認します
・65歳受給開始:2080万円
・75歳受給開始:2355万円(275万円増額)
一見、繰下げて75歳から受給開始したほうが275万円お得のように感じます
本当にお得なのでしょうか
●90歳における繰下げ年金の年利を計算
早速年利を計算してみましょう
年利 = 利息 ÷ 元本 ÷ 期間(年)
・利息は275万円
繰下げにより多く得ることができた275万円が利息です
・元本は2080万円
本来の65歳受給開始での金額が元本となります
・期間は16年
利息275万円を得るために積立てたのは75歳からの16年間です
年利 = 275 ÷ 2080 ÷ 16
≒ 0.83%
いかがですか。あなたは年利0.83%の金融商品に魅力を感じますか
●ストップ詐欺被害 私は騙されない
特殊詐欺で毎年数百億円の被害が発生しています。いまや性善説では生き残ることが難しい社会となってしまいました。騙すほうも言葉巧みに近づいてきます
「馬券必勝法」の類のものは昭和の時代から消えることなく続いています。本当に必勝法があれば、それが拡散されると皆当たり馬券しか買わなくなるから賭けが成立しなくなるのは明白なのですが・・・人間の欲とは恐ろしいものです
●魅力的な話は一旦立ち止まってウラを考える
あなたが得をするということは誰かが損をすることになります。全員得をする制度は存在しません
「年8.4%増額」も冷静に考えればおかしな数字で、投資信託の平均利回りは3~10%と言われているようです。「年8.4%」という数字だけに目が行くようにして本質を隠しているように思えてなりません
年金は以前にも「100年安心」という言葉だけが独り歩きし、多くの誤解を招いた前科があります。誤解が故意か過失か不明ですが、厚生年金の始まりが戦費調達から始まったことは政府は口が裂けても言わないのと同じで真相は闇の中です
私たちにできることは、大本営発表を鵜呑みにせずウラを考えることをすることでしょう